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　名古屋大大学院情報学研究科博士前期課程1年の鈴木智大さん（23）が10月に大阪府で開かれた米電気電子学会（IEEE）の消費者用電子機器分野に関する国際学会で論文を発表し、学生部門で金賞に輝いた。テーマは「スマートフォン（スマホ）カメラ動画を用いた競歩の反則判定」。鈴木さん自身は日本選手権に出場経験を持つ競歩の選手で、実験には東京オリンピック男子20キロ競歩3位、世界選手権2連覇中の山西利和選手（愛知製鋼）も協力した。【川瀬慎一朗】

　競歩は両足が同時に地面から離れてはならず、脚の角度も厳しく決められている。反則かどうかを判定するのは6～9人の審判員による目視だけで、現状はビデオや写真などを参考にすることはできない。

　これに対し、鈴木さんの研究は競歩の競技中の反則判定を、スマホで撮った動画で判別できるシステムだ。姿勢を推定する人工知能（AI）を活用して事前に正しい動きと反則の動きを学習させ、スマホで撮影した競技動画を読み込ませると、自動で反則判定ができる。先行研究に比べて反則認定の理由が容易に分かる数式モデルを用いているという。

　AIに学習させる競歩の動きは鈴木さんが所属する名大陸上部員4人のほか山西選手の協力も得て、2021年秋に撮影した。鈴木さんは「研究が認められたことはうれしい。これを励みにもっと頑張りたい」と話す。

　高校から競歩を始めた鈴木さんは山西選手と高校2年の夏に知り合った。当時山西さんが所属していた京都大陸上部で一緒に練習する機会があり、それ以来、アドバイスを受ける。鈴木さんは「非常にありがたい。勉強になり、良い刺激を受けている」と話す。

　鈴木さんはインターハイで準優勝し、大学2年のときには日本選手権に出場した。ただ、大学時代は度重なるけがで思うような結果を残せておらず、大学4年の6月には半月板の手術も受けた。

　今春、大学院に進んでからようやく本調子となり、11月には5000メートル競歩で高校3年のとき以来となる自己ベストを更新。1万メートル競歩でも更新し、23年に開かれる20キロ競歩の日本選手権と日本学生選手権の標準記録も突破した。「心肺機能は問題なく、まだまだ大きく縮められる自信はある」とする一方、「まだ体を操り切れていない」と分析する。

　現在は競技と同時にスマホカメラ2台を使用して陸上競技の動作を分析できるシステムの構築を研究している。「体への負荷を知ることで、けがのリスクを分析できる。調子の良くない時、どの動きが普段と違うのか、などが分かる」と話す。

　ただ、目下の目標は競歩で学生1位となり学生世界大会に出場することだ。24年にはパリ五輪も控えている。鈴木さんは「今やれることをすれば、（五輪も）その先に見えてくる。研究も競技も、この先1年ほどが勝負なので全力で取り組みたい」と力を込める。